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栄養療法は儲からない。それでも続ける理由。

2026.07.15

先日、MSS主催のセミナー
「栄養療法の実践に重要なタンパク質代謝とエネルギー産生を学ぶ」
に参加してきました。

約10年前、栄養療法を学ぶきっかけとなった恩師である溝口徹先生と、なんと前夜の食事会からご一緒させていただき。

翌日は丸一日、濃密な学びの時間を過ごすことができました。

(溝口先生の福岡での講義は9年ぶり!)

学び始めた頃の私は、まるで小学生が大学の講義に紛れ込んだような状態で、テキストを開いても専門用語と化学式ばかりで、先生のお話もほとんど理解できず💦

フロアを回る先生からマイクを向けられ質問されても、冷や汗ダラダラかきながら「分かりません」としか答えられませんでした。

あれから少しずつ学びを深め経験を重ねてきて、今では講義の内容を(以前よりは)理解し、普段の自分の診療とのつながりを考えながら聞けるようになりました。

自分自身の成長を少しだけ感じることができて嬉しかった。。。

 

改めて感じたのは(というか、栄養の講義・セミナーを受けるたびに感じていますけども💦)、分子栄養学は本当に奥が深いということです。

外来では、肌トラブルの根底に栄養の不足や偏りがありそうな患者様に、

「肌の乾燥や繰り返すニキビは、タンパク質や鉄不足が原因の一つかもしれません。」

あるいは、

「胃もたれや胸やけがあるようでしたら、まずは胃腸の消化機能を整えるところから始めましょう。」

そんなお話をさせていただきます。

これだけを見ると、ただ栄養を摂らせる・サプリメントを飲ませるのが栄養療法なのだろうと思われるかもしれません。

でも実はこれらは、体内で起こっている代謝という巨大な氷山の、ごくごく表面的な一角をフィードバックしているにすぎません。

 

最近はSNSで栄養について発信する医師もずいぶん増えました。

(AIに質問すれば数秒で得られるような知識や、断片的な情報も非常に多い印象ではありますが。。。)

影響力のある医師が、栄養について分かりやすく発信すること自体は、栄養療法の認知が広がるという意味では良い面もあると思います。

だけど本当の栄養療法は、それほど単純ではありません。

タンパク質代謝やエネルギー産生、ミトコンドリア機能、酵素反応、ビタミン・ミネラルの相互作用、ホルモンや自律神経、腸内環境など、複雑に絡み合った生化学を総合的に理解し、一人ひとり異なる背景や検査データ、生活習慣まで踏まえて考える必要があります。

そのうえでやっと、患者様の肌の悩みや体の不調の一番ボトルネックになっているであろう「代謝の滞り」をあぶり出していくのです。

 

だからこそ、栄養療法は「○○を食べればいい」「このサプリメントを飲めばいい」という単純なものではありません。

学べば学ぶほど、さらにその奥深さと難しさを実感するし、同時に、だからこそ面白いとも感じます。

何年学んでも「これで十分」ということはありません。

 

今回嬉しかったことの一つは、栄養療法を学ぶ医師や医療スタッフが確実に増えていることです。

内科、精神科、産婦人科、耳鼻咽喉科など、診療科を問わず、そして遠方からも非常に多くの先生方が参加されていました。

さらに、
「以前、先生のクリニックで高濃度ビタミンC点滴を受けたことがきっかけで栄養療法を学び始めました。」

「先生のレシピ本を持っています。」

そんなふうに声をかけてくださる先生方との出会いもあり、自分が発信してきたことが、誰かの学びのきっかけになっていたのだと知り、身の引き締まる思いでした。

 

そして、懇親会で印象に残った話があります。

多くの先生方が口を揃えておっしゃっていたのは、

「栄養療法は正直、儲からない。」

という現実でした。

食事や生活習慣を丁寧に聞き取り、一人ひとりに合わせて説明し、継続的にサポートする。

薬を処方して終わる診療とは違い、どうしても時間がかかります。

そのうえ、休日を使い、交通費や受講費を払い、多くの時間とコストとエネルギーを注いでいます。

だから経営だけを考えれば、決して効率の良い医療ではありません。

それでも私達が栄養療法を学び続けている理由は、とてもシンプル。

薬で症状を抑えるだけではなく、患者さんに根本から健康になってほしい。

その思いがあるからです。

そんな先生方のお話を聞きながら、「同じ思いで診療している仲間が全国にいる」ということを、とても心強く感じました。

 

そして、これは美容医療にもまったく同じことが言えると思っています。

最新の機器や薬剤について知っているだけでは、本当に良い医療はできません。

・なぜその症状が起きているのか。
・なぜこの治療を選ぶのか。
・その治療は、皮膚のどの組織に、どのような変化をもたらすのか。

そうした本質を理解して初めて、一人ひとりに最適な治療を組み立てることができます。

栄養療法も美容医療も、表面的な知識やテクニックではなく、「体を理解する学問」であるべきです。

知識は一朝一夕で身につくものではありません。

AIでネタをまとめて、アプリで動画を編集して、強く断定的な言葉で目を引き、SNSのフォロワーを集める、

それが医師やクリニックのマーケティングとして堂々と語られる今の時代。

「少しずつ学び、実践し、また学ぶ」

そういう地味で泥臭い積み重ねは古臭いのかもしれません。

それでも私は、表面的な知識だけで分かったつもりになるのではなく、基礎医学を土台に、生涯学び続ける医師でありたいと思います。

多くの刺激と学び、そして素敵なご縁に感謝した一日でした。

 

唯一悔やまれるのは、ある意味私の「推し」である溝口先生とせっかくお会いできるというのに

直前に水光注射でスネコスを顔に打ったばかりに

この日は点状出血と乾燥とくすみで、いつもより数段肌のコンディションが悪かったこと・・・(涙)

今回の記事で紹介した治療

TAKEDA BEAUTY CLINIC DOCTOR

医療法人TSC タケダスポーツ・ビューティークリニック 皮膚科・美容皮膚科 院長

皮膚科専門医 武田りわ

「美肌は人を幸せにする」を理念に、西洋医学を基礎とする美容医療に栄養医学を取り入れ、体の外側と内側からのケアを提案している。肌の老化を治すだけではなく、老けにくい健康な肌作りが得意。皮膚科専門医、オーソモレキュラー・ニュートリションドクター(OND)認定医の資格保有。

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